ホモサピエンス日誌。

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多様性アウフヘーベン。

多様性は第三の解を生む。

 現場で使える思考モデル・心理学シリーズ(1)ヘーゲルの弁証法を使って、施主の対立を解決してみた |  住宅業界コンサルタント入門~社会をちょっと変えられるかも!?

Aという解も正しく、Bという解も正しい、という場合、わたしたちは往々にして、A vs Bという対立項で物事を考えてしまう。

 

結果的に絶対的に正しい「A」という解が見つかればよいのだけれど、そういうときはあまりなく、だいたい「Aただし条件付きでB」になったり、「AもBもどっちもその通りだよね、意見の多様性って大事だよね」でお茶を濁してしまう。

 

最近よく思うのは、まずもってAという意見もBという意見も複数意見出ることが答えのバリエーションが増える、という点においてはとてもよいことだし、これがA、B、C、D、E…と増えていけばいくほど、Aの意見がBの意見にいい影響を与え、Cの意見もAの意見にいい影響を与える、とお互いの意見がより洗練されていく場合もある。

 

高校の倫理で一度は読んだことのあるヘーゲルの「弁証法」という思考法がまさにこのプロセスを言い表していると思う。

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モノやコトが「否定」を通じて、より新しく・高い次元に再生成される、というプロセスを、ヘーゲルは「正(テーゼ)」「反(アンチ・テーゼ)」「合(ジン・テーゼ)」ということばを用いて説明している。

 

「A. 目を覚ますためにコーヒーを飲むべきだ」というテーゼがあったとして、

他の人が「B. いや健康のために牛乳を飲むべきだ」というアンチテーゼを立てたとする。この場合、わたしたちが取りうる選択肢は、A/Bの二項対立で考えると、2択でしかないのだが、もし仮にお互いの思考を両方取り入れた場合に、新たな意見「C. 目を覚まし、健康にもよいカフェオレを飲もう」という意見が生まれる。

 

これがヘーゲルの言う止揚アウフヘーベン>で、この意見をまとめ上げ、さらに高次元の意見に昇華させる、というものの見え方で思考してみると結構面白い。

 

ただ、この弁証法的思考が使える大前提として、まず二つ以上の答えがテーブルの上にそろっている必要がある。ブレインストーミングなど半強制的に色んな意見を引き出そうというやり方もあるが、個人的には日常生活で生まれる自然発生的な問いに対してこの弁証法的な思考を試してみるのが良い気がしている。

 

というのも、ブレインストーミングなどの場では「自分の意見が正しいかどうかにかかわらず、とにかく思いついたものをあげられるだけあげる」というのが前提としてあるので、どうしてもその人は自分の意見に対する説明責任やら、自分事としてとらえる気持ちみたいなものがうすくなり、意見同士をぶつけても、あまり実になる意見は出てこないことが個人的には多い。

 

自分が考えた中では確からしいと思える意見同士をぶつけてみて、はじめてそこで思いもしない化学反応が生まれたりする。「みんな多様な意見がありますね」で終わらせてしまってはあまりにも無為な会話が、「なるほど、その意見の根幹にはこういう価値観があって、その意見とこの意見を合わせて考えると、こういった見え方もできますよね」というより深い議論ができると、お互いが口論になることなく、お互いの知的欲求も満たされてよりハッピーになれる方法かもしれない。